IVRに関係する主な法律とガイドライン
IVRを適切に運用するためには、関係する法律や行政のガイドラインを把握することが不可欠です。ここでは特に参照すべき3つの法律と、それに付随する指針を整理します。
個人情報保護法とIVRの関係
「個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)」は、事業者が個人情報を取得・利用・提供する際の基本ルールを定めた法律です。通話録音や音声認識で得られる「個人が特定できる情報」も対象になります。利用目的の明示、適正な取得、安全管理措置などが求められます。
通話録音を保存・活用する場合、誰の通話か、どのような目的で録音したか、どのくらいの期間保存するかを明確にしておく必要があります。利用者が安心してサービスを使える環境を整えることが、IVR導入企業の信頼にもつながります。
電気通信事業法の適用範囲
「電気通信事業法」は、通信設備を利用して他人の通信を媒介・提供する事業を対象とし、事業の適正運営と利用者保護を目的としています。IVRを電話網やクラウド通話サービスに接続して運用する場合、その通信設備や提供形態がこの法律の対象になる場合があります。
電話番号からの通話振り分けや録音・保存を行う環境では、「電気通信役務」に該当するかどうかを確認しましょう。通信事業者として登録や届出が必要となるケースもあるため、法令に基づく確認を怠らないことが重要です。
特定商取引法への対応ポイント
「特定商取引に関する法律(特定商取引法)」は、消費者向け取引のうち電話勧誘や通信販売などに関して規制を設けている法律です。IVRを使って自動音声で商品説明や販売促進を行う場合、消費者保護の観点で留意すべき事項があります。
サービス内容の明示、クーリングオフ制度の案内、通話録音への同意取得などを確実に行いましょう。通話を通じた販売促進フローを設計する際には、この法律を前提にスクリプトを構築することが必要です。
録音データの扱いとコンプライアンス
IVR導入時には、録音データや通話ログなどの情報を扱うことが多くなります。これらのデータは、法令遵守の観点から安全に取り扱うことが求められます。
録音の保存期間と通知義務
通話録音の保存期間や利用目的を明確にし、利用者に事前に通知しておくことがポイントです。トラブル対応や応対品質改善を目的とする場合でも、一定期間を過ぎたデータは削除する運用ルールを定めることが望まれます。
また、外部サーバーに録音データを保管する場合は、暗号化やアクセス制限など安全管理措置を講じる必要があります。録音している旨をIVRの音声案内で伝えることにより、利用者の安心感と透明性を確保できます。
オプトイン・オプトアウトの扱い
録音や音声解析を行う際は、利用者が同意(オプトイン)しているか、または拒否(オプトアウト)できる仕組みを設けましょう。 音声データを分析やマーケティングに利用する場合は、同意内容や目的を明示する必要があります。
こうした体制を整えることで、個人情報保護法における「本人同意」や「第三者提供」要件も満たしやすくなります。
参考:個人情報保護法ガイドライン(行政機関等編)|個人情報保護委員会
IVR運用において法令違反しないためのポイント
法律を守ったうえでIVRを運用し、安心して顧客対応を自動化するためには、設計と運用管理の両面での工夫が求められます。
スクリプト作成時の注意点
音声ガイダンスを設計する際は、録音の有無を明示し、誤解を生まない文言を使用しましょう。「この通話は品質向上のため録音しています」と案内することで、ユーザーに安心感を与えられます。
販売促進を伴う場合は、特定商取引法に基づく表示義務を満たす文言を加えることが必要です。また、断定的・誇張的な表現(例:「絶対に」「必ず」など)を避け、景品表示法にも配慮した表現を心がけましょう。
社内教育・管理体制の整備
IVRを法令順守のもとで安定運用するには、社内での管理体制と教育が欠かせません。 録音データのアクセス権限を明確にし、担当者ごとの操作範囲を定めておくことが重要です。
また、定期的に「保存期間」「アクセスログ」「同意取得状況」をチェックする仕組みを設け、社内監査や内部統制に役立てましょう。これにより、万が一のトラブル時にも迅速に対応でき、企業の信頼性を高められます。
以下の記事ではIVRの価格や機能、サポート体制などを、具体的に比較して紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
IVRを導入する企業にとって、法制度への理解と適切な運用は不可欠です。録音データの扱いや通信設備の管理は、現場運用と直結するため、導入前に十分な準備が求められます。それでも、法令を守りながら仕組みを整えれば、IVRは顧客満足度の向上や業務効率化といった効果を実現できます。
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