ITアウトソーシング市場規模の概要
ITアウトソーシング市場は、情報システムの保守・監視・運用代行、インフラ管理、ヘルプデスク、業務システムの改修や開発支援などを含む領域です。ここでは、国内外の市場動向や成長要因を解説します。
国内市場の動向
国内の実態把握には、経済産業省が公表する「特定サービス産業動態統計調査」の長期データが有用です。情報サービス業の年次売上高は2024年に17,920,285百万円で、同統計にある「システム等管理運営受託」は2,236,356百万円でした。運用管理の受託は全体の約1割強を占め、2014年の1,467,171百万円から増加が続いています。
統計上の区分は実務のITアウトソーシングと完全一致ではないものの、市場の基礎体力を示す指標として参照できます。
参考:長期データ 特定サービス産業動態統計調査|METI/経済産業省
世界市場の動向
世界のITアウトソーシングは、国境を越えて提供されるデジタル系サービスの伸びと連動しやすい構造があります。国連貿易開発会議は、2023年の「デジタルで提供可能なサービス」の世界輸出額が4.5兆米ドルだったと公表しており、遠隔提供のサービス需要が拡大していることが分かります。
ITアウトソーシング単体の世界統計は整理が難しいものの、デジタルサービス貿易の拡大は、外部委託や遠隔運用の需要を支える要因といえます。
参考:Developing economies surpass $1 trillion mark in digitally deliverable services exports|UNCTAD
成長要因の整理
市場拡大の要因は、大きく三つに整理できます。第一に、運用や監視など継続業務の外部化が進み、費用を「設備投資」から「月額の運用費」として管理しやすくなった点です。第二に、クラウドサービス利用の一般化で、構築後も設定変更や最適化が継続発生し、専門人材の確保が要件化しました。
第三に、情報セキュリティや法令対応の負荷が高まり、社内だけで体制を維持し続ける難度が上がっています。そのため、作業対応に限らず、設計から運用までを一貫して担う責任範囲が明確な委託形態が選ばれやすくなっています。
ITアウトソーシングの需要拡大が進む背景
ITアウトソーシングの需要は、「コスト削減だけ」が理由ではありません。事業の継続性や、社内リソースの最適配置を重視する企業が増え、外部委託を前提に情報システムを設計する流れも広がっています。ここでは、需要拡大の背景を三つの観点で整理します。
IT人材不足の深刻化
情報システム部門に求められる役割は、社内の問い合わせ対応だけでなく、全社の業務改善やデータ活用まで広がりました。一方で、運用監視やアカウント管理など「止められない業務」は減りません。
限られた人員でこれらをすべて担うと、改善に回す余力を確保しにくくなります。運用を外部に委託し、社内は企画や要件整理に集中する分担は、現実的な打ち手といえるでしょう。採用や育成と並行して委託を組み合わせる企業が増えるほど、市場は底堅く推移します。
システム高度化への対応
システムは「作って終わり」から「変え続ける」ものに変わりました。クラウド基盤や業務ソフト、連携用の仕組みが増えると、障害対応だけでなく、性能監視や設定最適化、継続的な更新対応が必要です。さらに、複数のサービスをつなぐほど、原因切り分けや責任範囲の設計が重要になります。
ITアウトソーシングは、運用設計のテンプレートや監視体制を持つ事業者を活用できるため、運用品質の平準化に寄与します。単発の開発委託より、運用と改善を一体で任せる形が伸びやすい背景です。
セキュリティ意識の高まり
情報セキュリティは「担当者の頑張り」では維持しにくく、仕組み化が前提です。アクセス権の棚卸しやログ監視、脆弱性への対処、インシデント時の連絡網など、運用ルールの整備が継続的に求められます。
外部委託では、監視センターや手順書整備などの体制を利用できる一方、委託範囲と責任分界が曖昧だと事故時の対応が遅れます。市場としては「セキュリティ運用まで含めて任せたい」という需要が増え、高付加価値の委託が伸びやすくなります。
ITアウトソーシング市場の今後
今後の市場は、単純な作業代行の拡大というより、委託対象の広がりと、サービスの中身の高度化で伸びる可能性があります。特に、社内に専門部署を置きにくい企業層や、クラウド運用の最適化需要が成長を押し上げやすい点が特徴です。ここでは、伸びる領域を具体的に見ていきます。
中小企業市場の拡大
中小企業では、情報システム担当が専任でないケースも多く、障害対応や更新作業が属人化しやすい傾向があります。そこで、定型運用を外部に任せて「止めない体制」を作り、社内は本業に集中する狙いが強まっている状況です。
加えて、取引先からのセキュリティ要請や監査対応が増えると、体制整備を急ぐ必要が出ます。こうした状況では、月額で利用しやすい運用受託やヘルプデスク代行などが導入しやすく、市場拡大の中心になり得るでしょう。
クラウド連携の進展
クラウドサービス同士の連携が増えるほど、運用の論点は「サーバの管理」から「連携の設計と監視」へ移ります。例えば、認証の連携やデータ同期、通知の仕組みなど、止まると業務が止まる連携点が増えます。
こうした連携の保守は、設定変更や仕様変更に追随する必要があり、継続運用の工数が見積もりにくい領域です。今後は、連携の監視・障害一次対応・原因切り分けをパッケージ化した委託が伸びやすいでしょう。
高付加価値化の流れ
市場が成熟するほど、委託先に求める価値は「作業量」より「成果につながる運用」に寄ります。具体的には、障害件数の削減や問い合わせの自己解決率向上、運用手順の標準化、セキュリティ監視の強化などが評価されやすくなるでしょう。
保守対応にとどまらず、改善提案や運用設計まで含める形は、価格が上がりやすい一方で、社内の負荷を構造的に下げやすく、需要が底堅く推移します。比較検討では、運用指標や報告内容まで確認する視点が重要です。
ITアウトソーシングの導入を考えるときのポイント
ITアウトソーシングは、契約して終わりではなく、運用の相性で成果が変わります。価格だけで選ぶと、対応範囲や連絡体制の不足が後から課題になりがちです。ここでは、導入前に押さえたい三つの視点を、実務に落とし込んで整理します。
長期利用を前提に設計
委託は短期でも可能ですが、運用手順の整備や業務理解が進むほど、改善の余地が生まれます。逆に、短期で頻繁に乗り換えると、引き継ぎコストが増えやすく、情報が分散して管理が不安定になります。
最初に「どこまでを社内で残すか」「どの資料を標準化するか」を決め、長期運用で効くルールを整えることが近道です。例えば、問い合わせの分類や障害連絡の経路、運用変更の申請手順などを初期に作ると、委託の効果が出やすくなります。
ベンダー選定の重要性
委託先の比較では、対応範囲と責任分界を最初に揃えましょう。監視だけなのか、障害の一次対応まで含むのか、復旧作業の指示権限は誰が持つのかで、同じ「運用代行」でも中身が変わります。
また、窓口の営業時間や緊急連絡の方法、報告書の粒度、エスカレーションの基準も確認ポイントです。提案段階で想定質問を投げ、回答の具体性や運用の型があるかを見ると、導入後のギャップを減らせます。
将来拡張性を確認
今は小さく始めても、事業拡大や拠点増で運用が増えることは珍しくありません。委託先が増員や体制拡張に対応できるか、追加サービスを同一窓口で扱えるかは重要です。
さらに、クラウドの設定変更や新サービス連携が増えた際、見積もりが都度高騰しない料金体系かも確認したいところです。契約書では、追加作業の定義や変更管理の手順、データや手順書の帰属を明確にすると、将来の選択肢が狭まりにくくなります。
以下の記事ではITアウトソーシングサービスの価格や機能、サポート体制などを、具体的に比較して紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
ITアウトソーシングのよくある疑問
市場規模を調べた後は、実際の導入判断に直結する疑問が出やすくなります。ここでは、比較検討の現場で出やすい質問をまとめました。読み進めながら、自社の前提条件を整理していくと判断が速くなります。
- Q1:市場規模が伸びている領域はどこですか
- 情報サービス業の売上に加え、「システム等管理運営受託」のような運用受託の項目が伸びています。今後は、クラウド運用やセキュリティ監視など、継続運用と改善をセットにした委託が伸びやすい傾向です。
- Q2:内製と委託はどちらがよいですか
- どちらが正解と決めつけるより、社内に残すべき役割を先に定義することが大切です。企画や要件整理は社内、運用監視や一次対応は委託といった分担にすると、改善に使える時間を作りやすくなります。
- Q3:価格比較で見落としやすい点は何ですか
- 月額費用だけでなく、対応範囲や営業時間、緊急対応の条件、変更作業の料金体系を合わせて確認します。委託範囲が狭いと追加費用が増えやすいため、契約前に責任分界を揃えることが重要です。
- Q4:導入後に効果を測る指標はありますか
- 問い合わせ件数の推移や、障害の検知から復旧までの時間、運用手順の整備率、報告の頻度と内容などが代表例です。目的がコスト最適化か、安定稼働か、セキュリティ強化かで見るべき指標は変わります。
まとめ
ITアウトソーシングサービスの市場規模は、国内では経済産業省の統計で情報サービス業の売上が拡大していること、運用受託に相当する項目が伸びていることから、底堅い需要が読み取れます。今後は人材不足やクラウド運用、セキュリティ対応を背景に、高付加価値な委託が伸びやすいでしょう。
導入を検討するなら、責任分界と運用体制を揃えたうえで複数サービスを比較し、自社に合う選択肢を絞り込みましょう。気になるサービスがあれば、ITトレンドからまとめて資料請求して、条件を並べて検討するのがおすすめです。


